色覚異常Q&A

 色覚異常って何? 進学や職業はどう考えたらいいの? 子どもが色覚異常だったら,どう接すればいいの?
 こんな疑問にお答えします。

●色覚異常の基本
Q1 ヒトの色覚の原理についてどのように考えることができますか。
A1 目には赤,緑,青に感じる感覚神経があって,色の赤み,緑み,青みの成分の違いとしてすべての色が見分けられると考えられます。これを三色視といいます。

Q2 要するに色覚異常とはなんですか。
A2 その人の色の見え方から推測して,三色視の三色の一つが弱いと思われるケースがあります。これを異常三色視といいます。さらにその一つが完全に欠損していると思われるケースがあります。これを二色視といいます。これらが色覚異常だと考えてください。同様な理由で一色視もありますが,非常に希です。

Q3 色覚異常にはさらにいくつかの種類があるそうですが。
A3 三色感覚のどれかが低下または欠損であるかによって三種類があります。多いのは緑感覚の場合でⅡ型といいます。次が赤感覚の場合でⅠ型です。ⅠとⅡを合わせたのが俗にいう赤緑異常です。青感覚の異常はⅢ型ですが,これは非常に少ないです。

Q4 色覚異常は先天性で遺伝だそうですが,どのように遺伝しますか。
A4 基本的にいえば色覚異常は母親からの遺伝です。よくあるのは父親が正常で母親が保因者のとき,その男子の二人に一人が異常だというケースです。(ここに保因者とは異常の遺伝子をもつが,自身は異常ではない女性のこと。その意味で保因者は男性にはない。)日本人は男子の約5%弱が異常であることから逆算すると,女性の10%弱が保因者ということになります。
 父親が異常で母親が正常の場合、その男児は正常ですが、女児は必ず保因者となります。このように両親の正常・異常はその子に男女クロスして遺伝します。父親が異常で母親が保因者または異常者の場合、女児にも異常が現れます。女性の異常は0.2%といわれます。

Q5 赤緑異常者には色がどのように見えるのですか。
A5 完全な二色視の赤緑異常ならば,赤と緑が同じに見えてしまうことになります。それはどんな色かというと,黄色だということになってしまいます。そもそも他者の感覚を主観的に知るというのは難しい問題を含みますが,それをシミュレートするコンピュータソフトや眼鏡があります。

Q6 色覚異常は治るのですか。
A6 遺伝ですから治りません。練習すれば検査の成績が上がるでしょうが,治癒とは違います。

 

●色覚検査

Q7 色覚異常の検査には石原表が有名ですね。
A7 異なる色が異常者には同色に見えてしまう,いわゆる混同色を仮性同色ともいいます。それを利用した検査表が仮性同色表で,石原表が代表的です。日本ではこれが唯一のように広く使われますが,大事なことは石原表はⅠ型Ⅱ型専用の,簡単ですが検出力にすぐれたスクリーニング検査だということです。異常の種類や程度を判定するものではありません。言えることはせいぜい異常の疑いの有無です。それも女子には誤診が多いといわれています。もし「疑いあり」という結果だったら,別の検査の必要があります。それにもかかわらず石原表はそれだけで決定的にうけとられてしまっています。

Q8 石原表以外の検査について説明してください。
Q8 多くの色チップを似ている順に並べる作業検査があり,色相配列検査といって,異常の型と程度がある程度わかりますので,スクリーニング検査で異常とされた人の診断用です。パネルD―15が定番で,Ⅰ型,Ⅱ型,Ⅲ型の分類と程度が診断されます。
 アノマロスコープは赤と緑に対する目の感度を測定する高度な光学器械で,赤緑色覚異常の検査の決定版とされます。しかし普通の眼科クリニックでこれらの機器を常備しているところはないでしょう。

Q9 学校健診の色覚検査がなくなりましたが,どうしてですか。
A9 悉皆調査が色覚異常をことさらに重大視して誤解を招いたり,必要のない人まで過剰に検出して烙印を押すことに批判が高まり,学校教育上配慮が必要な範囲の支障をみるためと検査の目的が具体的になったからです。色覚異常は教育活動に支障がないものとみなされました。検査の希望があれば学校保健法施行規則の健康相談の名目で学校医が検査することを妨げるものではありません。

 

●色覚異常と生活


Q10 色覚異常者が日常生活で注意することを教えてください。
A10 日常生活に不自由はないというのは色覚異常者の常套句です。そのとおりですが,その特色や程度は人さまざまで,色の誤認がないわけではありません。ここは色覚異常といわれる事実があることを認めたうえで,たまには日常生活を意識的に過ごすことです。検査ではなく,日常生活の中で自らの色の誤認を実体験する必要があります。

Q11 色覚異常者として進学や職業選択で注意することを教えてください。
A11 色覚異常が自分の希望に対して制度的にバリアになっていないか調べることで,もしバリアとわかったら自分の人生観をはっきりさせて,それと相談してください。

Q12 色覚異常だと文系しか進めないそうですが,理系進学は諦めるべきでしょうか。
A12 かつてそんな時代もありましたが,現在では制度的にほとんど支障ありません。学問には勉学の自由があります。

Q13 色覚異常者でも自動車運転免許を取得できるそうですね。
A13 大丈夫です。石原表誤読者には念のために別の検査がありますが,それでたいてい合格するようです。小型船舶の操縦についても同様です。


Q14 交通信号灯に対するアドバイスは。
A14 石原表誤読者は信号誤認による事故を起こしやすい,などと表立って言われることはありませんが,いずれにせよ信号には万事,気をつけるに如かずです。。

 


Q15 子どもが色覚異常とわかりました。どう接してやればよいでしょうか。
A15 色の見え方はお互いに違うことがあることを機会をとらえて教えてやり,後は余計なことを言わず,子どもの成長にまかせればよいです。通念としては時期を見て専門医の精密診断を仰ぐことなのでしょうが,あまり期待できないでしょう。

Q16 色覚異常では消防士や警察官になれませんか。
A16 消防士の採用に関しては、自治体によって異なります。「色覚について全く問わない」「三色(赤・青・黄 )の識別ができる」などですが、未だに色覚正常であることを要件としている自治体もあるかもしれません。消防士という同じ職種でありながらこのように異なること自体、色覚正常を要件とすることが根拠無きものであることを表しています。
 警察官の採用に関しては数年前まですべての都道府県で,「色覚正常」であることが要件でしたが,2011年からは「職務遂行に支障がなければ可」となりました。しかしどの程度なら支障がないのかは不明です。希望する都道府県の採用担当に聞いてみるのがいいでしょう。。

Q17 結婚についてどのように考えればいいでしょうか。
A17 色覚異常は遺伝するのですから,一般論としては結婚に当たって考えるべき問題ですが,どのように考えるかはその人の恋愛観・結婚観によって決まる問題です。一義的な答えはありません。