IBC岩手放送から「色覚異常の小学生とデザイナーの交流」の報道がありました。

 色覚問題を特集として取り上げることは評価できますが、視聴者に間違った認識を持たせるのではないかと看過できない所があり、てっぱいの会として制作担当者宛に意見を申し上げました。以下がその意見書です。

 

なお、9月10日現在で担当者からの何らかの返信はありません。

 

2024/8/30

IBC岩手放送

報道局(吉田みすず記者)御中

日本色覚差別撤廃の会

会長 小田 愛治

8/3放送「色覚異常の小学生とデザイナーの交流」に関する意見

 

 メディアであまり取り上げることが少ない「色覚」の問題について特集を組んでもらい、当事者の会として感謝します。

 特に、出演したデザイナーの松前さんが自らの色覚を一つの特性ととらえ、これを仕事に生かすことに結び付ける前向きな考え方を紹介されていました。また、松前さんの「大槻君にチャレンジしてほしいし、それが無駄にならない社会になってほしい」というエールは、色覚の問題を社会の課題として見る視点があったと思います。番組では、警察官採用についての現状を正確に伝えてもいます。また、学校での色覚に差異のある子への配慮が必要であることも伝えています。

 

でも、看過できない問題点があります。

色覚の差異を病気ととらえている。その間違った認識を視聴者に伝えることになっている。

表現の具体例

・大槻君はある病気を抱えている

・錐体細胞の異常が原因でおこる病

・現在、効果的な治療法はありません

・学校の先生も大槻君と同じ色覚異常を抱えている

 その結果として、ヒトの持つ色覚多様性の上にたった一人ひとりの色感覚の違いの発想が感じられず、色覚の正常・異常の二分法の発想から抜け出せない内容となっています。

 「異常・正常」の言葉を使用するかぎり「病気」ということになるのではないかと思います。眼科医は治療もできないにもかかわらず、エビデンスを欠く学校での色覚検査の励行を長年主導し、こどもたちに「色覚異常」のレッテルを貼ってきたのです。

遺伝学会が呼称を「色覚多様性」に変えることを近年推奨しています。「多様性」は、それぞれの「個性」を意味しています。「病気」とは言えません。眼科医会が「色覚異常」の呼称に拘るのが問題です。

 

色覚問題は呼称の問題に限らず、進学・就職等に差別・偏見が残っています。少なくとも、報道する場合、間違った認識を視聴者に伝えないでほしいと願います。

参考までに、会の新刊本、HPを紹介します。

 「色覚の多様性-<選別の病理>を問い直す」日本色覚差別撤廃の会編著 高文研

   https://tetpainokai.jimdofree.com/    e-mail:tetpainokai@gmail.com