2020年8月25

滋賀医科大学長

上本 伸二  殿 

 

         日本色覚差別撤廃の会

 会長  荒 伸直 

 

時下、益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。

さて早速ですが、色覚当事者のほとんどは周知のとおり、実際の日常生活でとくに支障のない場合が大半です。そのため、先進諸外国においては色覚の差異による入学制限、就職差別ほぼ存在せず、貴院のホームページで掲示された業務に当事者が普通に従事し何ら支障なく活躍をしており、その中には著名な科学者、教育者、医師も多数存在しています。

他方、日本の大学、企業、官公庁においては長い間、入学や採用において職務上実際に必要な色彩識別能力ではなく、眼科的色覚検査の判定を盲信してほとんどの場合、簡易ではあるが検出力過多な「石原式検査表」を用いて、学校生活や就業上特に支障のない者まで「異常」の烙印を押し、根拠のないまま門戸を閉ざしてきた特異な歴史があります。そのため、私たち色覚当事者の会の中にも、かつて存在した数多くの安易な就業制限のために、目指していた職種をあきらめざるをえなかった会員が少なくありません。 

しかし、これらの不条理な差別は人権問題であるとの認識が深まり、2001年に労働安全衛生法の改正省令、そして2003年に学校保健法の改正省令が施行され、ついに雇入時健診および学校定期健診の必須項目から眼科的色覚検査は削除されました。長年にわたる人権軽視の心無い処遇、不合理な社会的バリアの一つが制度上、解消されたのです。そして現在、我が国での就業制限は当該業務上で必要不可欠な色彩識別能力が不足すると確証できるごく一部にのみ限定されており、ほぼ全ての職業において色覚による排除は認められなくなってきました。

ところが貴大学眼科学講座は大学公式のウェブサイトに開設した「色覚外来」のURLにおいて「職業適性の考え方」のページがありますが、同ページの「異常の程度と職業適性」の項目では色覚異常に適さない仕事として多くが列挙されています。これら職種一つ一つにそれぞれ適さないというエビデンスは本当にあるのでしょうか?さらに、同ページには「大学入学時の制限」及び「国家試験・資格試験では」の項目がありますが、その内容は閲覧した読者の正しい判断に資する、広く認められている近年の事実に基づいた内容なのでしょうか? なお、全体にわたり随所に留保を付け足してはいますが、偏見を糊塗する弁解の方便と見受けられます。

貴大学が不適格と指摘する業務には、これまで実に多数の色覚当事者が立派に従事し、何ら支障なく活躍をしてきました。その業務に向かってあこがれをもって頑張っている多くの若い当事者が現にいるなかで、同ページの内容はその努力を否定し、その夢の実現をあきらめることを強いています。実際、貴大学ームページは色覚に差異のある当事者を大変驚かせ、混乱させ、苦悩させています。本来は夢と希望に満ちているはずの若者や父母がこのページを閲覧して、就業差別への多大な不安を抱き、当会へ助けを求める切実な問合せが届いています。 

 

そこで色覚の当事者団体として以下の点をお尋ね致します(質問)。

1.貴大学ウェブサイトにおいて列挙された色覚異常の人には適さないとする記載内容は、いかなる科学的論拠(エビデンス)に基づいて記載されたものですか?  記載された職業ごとにご回答ください。

2.このウェブサイトは貴病院の責任において組織的に作成し、公式に決裁・承認されたものですか? それとも所管部署の担当者の所見として記述されたものでしょうか?

 

以上、ご多忙のところ恐縮ですが、9月9日(水曜日)までに必着でご回答をお願いします。

なお、回答文は正式な書面の形式であれば、データファイルで作成しメール添付により返送いただいても結構です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<問合せ、回答返送先> 日本色覚差別撤廃の会事務局

211-0004 神奈川県川崎市中原区新丸子東3-1100-12

かわさき市民活動センター気付

                          Mailtetpainokai@gmail.com