2018年4月3日

国土交通大臣

石井 啓一 様

日本色覚差別撤廃の会

                                                          会長  荒  伸 直

 

鉄道従業員採用上の色覚基準の改正等について(要請)

 

 本会は色覚に差異のある本人・家族の集う当事者団体です。

 色覚の差異、多様性は、日常生活でとくに支障のない場合が大半にもかかわらず、旧来の「色盲」の呼称とも相俟って、「色が見えない?」との誤解や偏見にさらされてきました。これらを助長してきたのが、眼科的色覚検査による「正常」「異常」の振り分けでした。

 さて、2001(平成13)年の労働安全衛生規則の改正により、雇入時健康診断において眼科的色覚検査が廃止されました。その根拠として「色覚検査についての知見の蓄積により、色覚検査において異常と判別される者であっても、大半は支障なく業務を行うことが可能であること」等を挙げています。また職場において「色分け以外の措置を併せて講じること」とされたところです(厚生労働省労働基準局長通知)。さらには「色覚検査は現場における職務遂行能力を反映するものではない」とも解説されていたのです。

 他方、鉄道事業者においては現在に至るまで、従業員の採用選考時に眼科的色覚検査における結果の「正常」を採用の条件としています。その理由をたずねると、列車(動力車)の運転免許試験において、身体検査の合格基準が「色覚が正常であること」と関係法令に規定されているからとしています(「鉄道営業法」(明治33年)に基づく「動力車操縦者運転免許に関する省令」(昭和31年)・別表2「視機能」の基準4)。

 鉄道事業者としては、「現場の信号器などを十分に見分けられる色彩識別力が現物で確認できれば、それを眼科的色覚検査に替えていけるのでは」という要請に対して、各社とも一定の理解は示しながらも、やはり大本の法令の改廃がカギとの姿勢も示しています。

 職場における色覚バリアアフリーへの「合理的な配慮」を欠きつつ、根拠(エビデンス)の薄い時代遅れの身体検査基準によって未だに数多くの有為の人材に門戸を閉ざしているのは、人権にふれる遺伝的な差別的取扱いと言わざるをえません。

 そこで、以下のとおり要請いたしますので、よろしくご高配のほどお願いいたします。

 

 

1 ① まず職場において無自覚・不合理に現存する色覚バリアを解消しつつ、② 動力車操縦者運転免許資格で「色覚が正常であること」と定める身体検査基準について、「実際の運転業務の上で支障のない色彩識別力があること」へと速やかに改正するとともに、③「色覚の正常」=「色覚検査の正常」との予断に基づいて採用選考時の理不尽な排除の温床となっている眼科的色覚検査を速やかに廃止し、現場の実物で識別力を確認されたい 以上