2019年3月11日

NHK朝ドラ「まんぷく」製作責任者・脚本家様

朝ドラ「まんぷく」の色覚の扱いについての要望

 

 私達の会は、一般多数者の色覚と一部にちがいのある(眼科的にいわゆる「色覚異常」とされてきた)当事者の能力が正当に評価され,色覚差別・偏見のない社会を作るよう活動している団体です。色覚差別・偏見については、進学や就職、結婚等についての風評差別・偏見がたくさんあった歴史を持っています。これに関しては色々な人のご尽力で現在徐々にではありますが、改善されつつあります。しかしながら、あまり知られていないこともあり、悪気なく無意識での差別・偏見に繋がることがまだまだあるようです。

 今回の朝ドラ「まんぷく」での福子の義兄である忠彦さんの「色弱」については、その一つではないかと心配しています。会の中で話題になり、意見文が二つ寄せられたので紹介します。

色覚問題はもっともっと丁寧に   S.I

 戦争体験で「色弱」になったという話が番組の中で流れました。私は色覚異常の当事者です。私の年代より以前の当事者は、色覚異常に対する偏見・差別にさらされました。進学・就職そして結婚等々、社会の隅々までいきわたっていたと思います。それに対して、当事者への不当な能力差別・偏見撤廃の声があがり、いまではほとんどの制限差別はなくなっています。でも、いまだに一部でおかしな反動が蠢いています。なぜこんなことが起こるのでしょうか。色覚に関してひどい偏見差別の歴史があったということの反省がしっかりなされていないせいかと思うのです。この番組のように、何気なく「色弱」を扱うことでも、それが独り歩きして色覚差別・偏見を作ってしまうことになるのではないかと危惧します。本当に戦争体験で色弱になったのか?医者は何をもってそう判断したのか?番組で流された絵は本物か?等々もっともっと丁寧に扱われるべきだと思うのです。

 

思い付きで扱ってほしくない色覚問題。  K.I

朝ドラ「まんぷく」の忠彦さんが戦争で目を傷めて色がわからなくなったという設定だったと思います。原因や状況が詳しく触れられているわけではないので、それが本当にあり得ることかどうかはわかりません。網膜が強い光などで焼かれたりして働かなくなり、弱視になって色も識別しにくくなることはあるようですが、PTSDが引き起こす心因性のものとしても後天的に色覚だけが変わってしまうということは考えにくいです。

そしてさらにおかしいのは、色がわからなくなったといって青を使っていること、そしてある日突然モデルの女性に刺激されて開眼(?)し、一転して赤を使い始めたこと。色覚ってそういうものなのか、気の持ちようなのかという誤解を招くと思います。

「画風が変わった」などというものではないはずです。戦争のおぞましい体験の記憶からようやく解放された自由な感覚を表現したかったのかもしれませんが、題材や筆致などで表現することはあっても、それを色で表現することは矛盾です。

わたしは少々強度のいわゆる色覚異常です。赤と緑というより、緑と茶色の区別ができにくいことが時々あります。そんな私を見て中学校の先生は「木炭画を描いてみたら」と言ってくれました。色が区別できなかったら、色を選ぶことが苦痛なのです。(他の人と色の感覚が違うことに気が付かない場合ならユニークな色遣い、個性的な絵だと評価されたり、自分でも楽しんでいる方もあるでしょう。)つまり多数派の色覚の人たちの中で生きる以上、その基準に合わせざるを得ないと感じ、それができないことの苦痛であり、言葉や態度で差別されるだけでなく、色覚当事者の多くがそれを劣等感として感じさせられるのです。そして日本はそれをあからさまに語れない社会にされてしまっているのです。色覚問題は扱っていただけるのは大いに有りがたいけれど、正しく伝わって理解が広まるように慎重に扱っていただきたいと思います。

 

 

 意見を出してくれた会の中の誰もが「まんぷく」を楽しみに見ていました。しかし、こと「色覚問題」に関しては会の誰もが疑問に思いました。是非今後のために、番組の製作責任者、脚本家からの誠意ある回答を希望します。

 

 

日本色覚差別撤廃の会

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