2024年4月18日
BPO(放送倫理・番組向上機構)御中
日本色覚差別撤廃の会
会長 小田愛治
フジテレビ「君が心をくれたから」(2024年1月8日~3月18日)について
私たち日本色覚差別撤廃の会は、色覚の差異を有する者の能力が正当に評価され、その社会生活が向上することを目的とした当事者及びその家族の団体として活動しています。
フジテレビ局で放映されたドラマ「君が心をくれたから」は公共放送として以下のような放送倫理上の問題があると思われます。
なお、本件につきましては、2024年2月29日付けの文書で、番組内容への疑問点について本会よりフジテレビ局宛に照会文を送付しました。しかし、遺憾ながら何らの応答、対応もなかったところです。
1 色覚当事者の描写が科学的事実に反するものとなっている。
登場人物のセリフとして次のようなものがあります。
・「見えてないんでしょ。赤い色」「俺の目、赤い色を感じることが出来ないんだ。だって俺は色を判別できないんだ」(1月8日第1話)
・「『夕日がきれいだ』と言われた時、俺そのきれいさが分からなかったんだ。この目じゃ、赤はくすんだ緑色だから」(1月22日第3話)
また、男性が雨の夜に横断歩道の信号機の赤信号を見誤り交通事故にあう場面があります。
色覚の差異はいわば百人百様で多種多様ですが、科学的知見ではおよそ「赤を感じない」とか「色判別が出来ない」「赤が緑に見える」ことはありえないとされています。
また、多くの当事者が自動車運転免許を取得し日々の生活でこれを利用していますが、色覚が原因とされた交通事故の発生事例は聞いたことがありません。
これらのセリフ・描写は、科学的事実としての根拠を欠くものです。
2 制作者に色覚問題への理解と社会問題としての認識が見受けられず、ドラマにおける色覚当事者の誤った描写は色覚の差異に対する偏見を助長させかねないものである。
日本社会では戦前より、学校をはじめ広く色覚検査が制度的に実施され、スクリーニングに過ぎない検査表の誤読者を「色盲」ないし「色覚異常」として、進学時に広く制限がなされ、また就職時に多くの職業から排除されてきました。
これらが科学的根拠を欠く思い込みによる偏見であり、就職差別をはじめとする重大な人権侵害であるとの理解が深まり、多くの方々の努力によって見直されて来た歴史があります。
今回のドラマは、かかる前時代的な偏見を地で行くような描写となっており、日本社会に根強く残る色覚の差異への偏見と差別を助長させるものと言わざるをえません。
また、ドラマでは色覚当事者を「色覚障害者」と呼称しています。(1月8日第1話)
現在の生命科学では色覚の差異はヒトが持つ個体差の一種であり、「異常」とか「障害」とするのは適当でないとの学問的見解が示されており、色覚多様性の概念の定着が広く社会に求められています。「色覚障害者」の使用に見られるように、制作者には人の持つ色覚への今日的理解が見受けられず、テレビ局という社会的立場への自覚に疑問を持たざるを得ません。
テレビドラマで色覚を取り上げること自体には異議はありませんが、その扱いを誤れば、視聴者に色覚の差異への間違った認識と差別意識を広く流布させることとなります。その意味からも、制作者には色覚差別の歴史と現状への理解や、当事者への取材等を通してその心情を推し量る姿勢が必要不可欠と考えますが
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